焦点 痴呆性老人の看護に関する研究
研究
痴呆性老人の家族看護の発展過程
諏訪 さゆり
1
,
湯浅 美千代
2
,
正木 治恵
2
,
野口 美和子
2
1東京医科歯科大学医学部保健衛生学科
2千葉大学看護学部老人看護学教育研究分野
pp.203-214
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900344
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緒言
痴呆性老人を在宅で看護することは,家族看護者にとって非常に負担の大きいことである。その理由のひとつとして,痴呆性老人のコミュニケーション能力が低下していることが挙げられる1)。それゆえに痴呆性老人と家族看護者との意志疎通は困難になり,家族看護者は痴呆性老人の言動について誤解しやすくなる。中島2)は,このような状況にある家族看護者について,その場に似つかわしくない痴呆性老人のメッセージを自分の学習体験を通して解読し,看護の手だてを組み立てていかなければならないと述べており,痴呆性老人とのコミュニケーションは,家族看護者が痴呆性老人をどのようにとらえているのかによるということを示唆している。
さて,Ruesch3)がコミュニケーションについて,それは言語レベルで明確に意図的に行なわれるメッセーシの伝達だけを意味しているのではなく,むしろ人がお互いに影響しあうそのすべてのプロセスを意味していると述べているように,コミュニケーションは人々がお互いに影響しあう過程であり,したがってコミュニケーションを通して行なわれる痴呆性老人の看護も,コミュニケーションと同様な過程をたどると思われるが,看護の変化をとらえた報告は極めて少なく不十分である。
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