原著論文
心臓手術を受ける患者の術前,術後のストレス・コーピング—患者が遭遇している体験過程による分析
根本 良子
1
1山形大学医学部看護学科
pp.61-81
発行日 1995年2月15日
Published Date 1995/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900290
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はじめに
1.研究の背景
近年日本における心疾患の罹患率は,食生活の変化,生活環境の変化などにより増加傾向にあり,死因の第2位を占め重大な健康上の問題になってきており1),外科的な治療を必要とするものも多くなってきている。幸い,心臓外科の発達により,長期間心臓病で悩み苦しんでいた患者や,急激に発症した心筋梗塞などの患者も,手術により新しい人生を歩むことが可能になってきており,今後さらに心臓大血管手術を受ける患者は多くなると考えられる。
手術操作の対象となる心臓は,全身に酸素と栄養を運ぶポンプ機能を持ち生命を維持するためには不可欠の臓器である。心臓手術患者に関する研究では手術を受けることが最も大きいストレッサーであると報告されており2),術後の合併症は,心不全や低心拍出量症候群,心筋梗塞,心タンポナーデ,脳血管障害,感染,出血,肺炎,腎不全など生命を脅かすものが多くある3-5)。このような事から,術前の患者は生命と直結する手術を受けることについて不安や恐怖などの体験をし,手術を受け入れることが困難な状態におかれている。
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