焦点 現象学的アプローチ
研究
看護学教育における集中的グループ体験のもつ教育的機能に関する研究—現象学的方法を用いて
広瀬 寛子
1
1東京大学大学院医学系研究科保健学専攻看護学教室
pp.537-547
発行日 1990年12月15日
Published Date 1990/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900280
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Ⅰ.問題
人間は,潜在能力を発揮し,自己を実現しようとする傾向を内在しており,絶えず変化しつつある過程の中にあり,適当な条件が与えられれば,自己実現に向かって成長することを求めている(Rogers,1959,1961)。このような自己実現過程が人間的成長であると考える。これは人間性心理学の立場,特にC. R. Rogersの立場を基礎とした人間観に基づくものである。この『適当な条件』として,エンカウンター・グループ等を含めた集中的グループ(以下グループと略す)がある。そこには1人1人が対等の人間として心を開いて素直に語り合い,そのような人間関係の中で反応し合いながら,自分を見つめ,自己と他者に気づいていく過程がある。
このようなグループの実践が,千葉大学看護学部4年次の選択科目である「看護学教育」でも行なわれている。これは,病院・保健所などでの,看護者としての臨地実習(以下実習と略す)を通じて考えてきたこと,日頃感じていることなど,自分自身の感じ方・考え方を他者とのかかわりの中で知ることが目的である。研究者自身も,学生時代にこのグループを体験し,その体験はその後の実習や,卒業後看護婦として働く中で生き続けてきた。そして,人としてのあり方,看護婦としてのあり方を考えていく上で,研究者に大きな影響を与え,人間性を育む看護学教育を考えるきっかけとなった。
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