焦点 Grounded Theory Approach
原著論文
看護婦からみた患者の了解不能性の分析
川名 典子
1
1聖路加国際病院
pp.305-316
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900256
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
臨床の場面で,看護婦は往々にして患者の対応に窮することがある。たとえば頻回なナースコールや繰り返される不定愁訴,看護婦に対する怒りや攻撃あるいは拒否的態度や引きこもり,さらには患者のパニック状態や不安,恐怖,医療不信などである。医師にとっても同様に,一般的に苦手とされる患者がおり,Lipsitt1)は“長い間医師に受診し,多くの訴えをもち,医師の治療的努力に対して反応しない患者”をproblem patientあるいはdifficult patientと呼んでいる。そして“医師はこのような患者の症状を軽快させようと賢明に努力するが,それは普通失敗し,患者と医師の双方が葛藤,罪悪感や怒りを経験する。しかしこのような過程のすべては一般に言語化されないままに終わる”としている1)。
一方で川島らは,看護婦が臨床場面で問題と感じる患者として,ナースコールが多くて看護婦が振り回されてしまう患者や,依頼心が強く退院したがらない患者,予後不良な患者を挙げ,これらを「お手上げ患者」と称している2)。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.