提言
ふたたびK. Jaspersの了解的方法について—石川氏の批評にこたえて—
前田 利男
1
1新潟大学医学部精神神経学教室
pp.238-239
発行日 1964年3月15日
Published Date 1964/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200687
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本誌1962年11月号に発表した私の「了解的方法に関する一批判」に対し,東京大学の石川清氏より「批判のありかたについて」(同誌12月号)と題してきびしい批判がありましたが,これに対して私はここにその再批判を行ないたいと思います。
まず石川先生ご指摘のごとく,私に独自の立場や見地がなく,それゆえに非独創的,非生産的であることは私自身も十分にこれを認めております。その理由は第一に私自身の研究不足により自分自身の立場なり,見地なりをいまだ見出しえないということを卒直に告白致します。第二にしかし,実験し実証しうる自然科学的な面においてならともかく,哲学的あるいは心理学的な精神医学の分野においてある特定の立場なり,見地をとることは,それ自体が批判的態度に逆行するのではなかろうかという危惧があるからであります。第三に,そこでむしろこの機会に私の立場や見地がないとし批判のありかたを問われ,かつJaspersやHeideggerに造詣深き石川先生ご自身の立場なり見地なりを明確に表明しご教示を仰ぎたく思つております。
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