焦点 Grounded Theory Approach
研究
長期入院中の精神分裂病患者の時間の流れの速さに関する感覚の分析—結核患者との対比を通して
田中 美恵子
1
1聖路加看護大学精神看護学
pp.290-304
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900255
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本研究は,長期入院中の精神分裂病患者の時間認知を,時間の流れの速さに関する感覚の点から明らかにしようとしたものである。方法は帰納法的アプローチを用い,grounded理論に基づき,長期入院中の精神分裂病患者に,長期入院中の結核患者を対比させ,対比分析を行なっている。
対象者は,年齢範囲30歳から65歳までの,入院期間が6か月以上になる精神分裂病の男性患者30名(対象群)および肺結核の男性患者22名(対比群)である。データ収集は,研究者作成による自由回答方式の質問紙を用いた面接によって行ない,それを質的に分析した。
データ分析の結果,時間の流れの速さに関する感覚とは,自己が到達しようとして設定している設定自己と,自己が今ある位置との主観的な距離感覚と,それに向かうペース感覚という2つの側面から成り立つものであり,またそれは,時間に対する価値判断そのものであることがわかった。これにより,時間の流れの速さに関する感覚の構造図が明らかにされた。さらに,以上の2側面を分析の軸とすることで,時間の流れの速さに関する感覚には,速時間感覚型,遅時間感覚型,止時間感覚型,即時間感覚型の4類型があることがわかった。また,各類型が,時間の流れの速さに関する感覚の構造図内のどの位置にあるのかも明らかにされた。
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