焦点 臨床看護の概念化に向けて
綜説
臨床看護の概念化に関する1つの問題提起—看護診断と臨床判断を巡って
羽山 由美子
1
1聖路加看護大学
pp.216-224
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900138
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はじめに
ここ3-4年のことであるが,看護の専門誌や学会の動向を見ていて興味深く思われることが2,3ある。1つは,看護診断に関する図書の翻訳出版の急増と,臨床の一部がその採用に熱心に取り組んでいることであり,その勢いには目を見張るものがある。たぶんに出版業界の操作もあるのだろうが,多くの臨床看護婦が関心を寄せているのも事実であろう。もう1つは,日本看護科学学会や看護系の大学院生を中心に,人間学的あるいは現象学的な理解への関心が高まり,研究方法にグラウンデッド・セオリーをはじめとする質的研究のアプローチが用いられる傾向である。また後者の動向には,ケアリングや臨床判断(clinical judgment)などの概念,およびフェミニズムの視点に対する注目も含まれている。こちらも,一部の間では一種の流行といえる様子を呈している。
これら2つの動向についてさらに興味深いことは,明らかにその動向を担っている層が異なるという点である。看護診断の推進の中心には,1,2の医師と大学の看護教員が含まれるが,実際に適用を考えているのは教育よりも臨床の場の看護管理者やリーダーたちである。むしろ大学の看護教員の多くは,看護診断それ自体とそれの臨床・教育への導入については発言を保留している様子である。
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