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査読を頼まれることは多く,基本的に断らないことにしているので,「あー,また査読だ」と思ったりする。そして不思議なことに,忙しい時に限って査読が重なる。職場で読めなくて自宅に持ち帰り,自宅で読めなくて職場に持って行くを繰り返して,完成するまで気が重い。そういうときは,「筆者,査読者,編集者が協働して,より良い論文を出版する」という査読本来の目的に立ち返り,私自身が学ぶ機会でもあると思って,前向きな気分に切り替えるようにしている。実際に,何も学びがなかった査読はない。
依頼される査読は,ほぼすべて質的研究である。査読の時に私自身が気をつけようと思っていることは,「研究方法論あるいは研究方法にこだわり過ぎないこと」である。博士前期・後期課程で質的研究の授業を担当し,学位論文指導や審査に携わって15年以上になる。その経験が私を「研究方法論あるいは研究方法にこだわる人」にしていると思う。質的研究法の授業や学位論文指導あるいは審査の中では,本サイトのガイドラインに掲載されている「看護学の知識体系を構築するための質的研究方法を用いた学位論文指導プログラムの作成リーフレット」の論文評価基準項目(本号,375-376)の,研究方法に関連する部分をとても大切にしている。具体的には,論文評価基準項目の「5.研究方法の選択理由・適切性が明確である」「9.研究方法を十分に理解し,適切に使っている」「11.結果の厳密性を確保する方法が書かれている」である。これらを大学院生には,十分に理解してもらいたいと思って指導している。しかし投稿論文の査読をする時には,当然ながら文字数制限もあるので,学位論文審査評価基準の内容をどこまで記述されていれば良しとするのかは,慎重に判断したいと思っている。
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