特集 若手研究者の活躍に向けて
看護・助産学分野の若手研究者の研究力向上のために
新福 洋子
1,2,3,4
1広島大学
2広島大学大学院医系科学研究科
3日本学術会議若手アカデミー
4Global Young Academy
pp.144-148
発行日 2023年4月15日
Published Date 2023/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202084
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はじめに
日本全体の科学技術や研究力の停滞については,昨今広く議論がなされている。他分野では若手研究者のポストの不足や雇用の不安定さが問題になっているものの,看護・助産学分野は大学および大学院の創設が続き,ポスト自体は確保しやすい状態にあり,進学者も増加傾向にある。また,国際的にもCOVID-19を経験し,保健分野の研究の重要性はますます強まり,看護・助産学分野の研究力の強化は今後さらに力を入れて進めていかねばならない課題となっている。
2019年に文部科学省が示した研究人材強化体制の構築の中には,①研究者が研究に打ち込める環境の整備,②チーム型研究体制の構築,③キャリアパスの多様化と流動性を促進する環境の整備が含まれる。まず前者2つは,管理職および大学の意思決定層が整えるべき環境である。例えば任期制の見直しや研究者の処遇改善,研究時間の確保やURA(リサーチ・アドミニストレーター)の雇用等がある。研究者としてできることは,こうした議論に参加し,自らや周囲の状況を踏まえた意見の発出,また他のセクターの論点を理解し,管理職者や意思決定層と意見交換の場を持つことだと考える。
3つ目の点においては,国際化,および国際頭脳循環,国際共同研究の促進が謳われている。これは研究者自身が努力をしていくことと,それができるような研究環境を整えることの両方が求められる課題である。本稿では,国際的なアカデミー活動を中心に,国際的なネットワークに身を置くことでの可能性の広がりについて,また看護・助産学の研究者が研究力向上のために必要なことについてまとめたい。
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