特集 地元創成看護学の可能性—地元から看護学を創るために
「地元創成」に向けた看護系大学の取り組み
—【広島大学大学院医系科学研究科成人看護開発学研究室】—研究開発された看護技術を世界に届ける—医療保険者とのコラボによる糖尿病性腎症重症化予防事業,そしてポピュレーション・ヘルス・マネジメントへ
森山 美知子
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1広島大学大学院医系科学研究科成人看護開発学
pp.462-468
発行日 2022年10月15日
Published Date 2022/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681202025
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取り組みの契機と実際
セルフマネジメントを可能とするケアキットとの出会い
広島大学大学院医系科学研究科成人看護開発学研究室(以下,本研究室)における「慢性疾患セルフマネジメント/疾病管理」への取り組みは,2003年,米国のシカゴで開催された第5回米国疾病管理学会でのケアキット(図1)との衝撃的な出会いから始まる。「看護師が,自分たちのもっている技術をきちんと患者に届けられたら,入退院を繰り返す慢性疾患患者は減る」との強い思いから,疾病管理(Disease Management)の概念に夢中になっていた筆者は,ケアガイド社(現Communication Science社)の企業ブースにくぎ付けとなった。糖尿病やCOPDなど,セルフマネジメントが必要な患者教育教材が疾病ごとにワンパッケージになっているのだ。企業の創設者であり,開発者でもあるSylvia Aruffo氏に何度も頼み込み,ようやく商品開発の哲学や開発方法,サービス提供方法などを学んだ。Aruffo氏は,商品開発には患者の思考や行動(何につまずき,どうしてわからなくなるのか等)の理解が必要で,文化人類学的な方法でのアプローチを教えてくれた。「患者が最も多くの時間を過ごす複数の場所で,各2時間以上,患者の行動を観察しなさい。そして,なぜその行動をとるのかの意味を問いなさい。最低でも1疾患につき20人は観察しなさい」。この言葉の通り,私は愚直に患者宅への家庭訪問を繰り返し,患者のそばで何時間も観察し,問いかけ,さまざまな慢性疾患疾病管理プログラムを開発した。
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