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実装科学とデータサイエンスの意義
看護学の研究の発展に伴い,研究成果の社会実装の必要性が高まっている。看護研究は論文を出版して終わりではなく,それが社会で活用されてこそ臨床が発展する。その一方で,読者の方々の中には,「こんなに効果のある先駆的なケアが論文として公表されているのに,なぜ臨床に広まらないのだろう?」「あの患者さんに,あのケアを提供できればきっとよくなるのに……」,と考えたことがある方も多いと思われる。事実,研究として効果が認められた介入を社会実装するには多くの障壁があり,臨床で実践されないまま終わる研究も数多い。これを,エビデンス=根拠とプラクティス=実践のあいだの隔たりを意味するものとして,「エビデンスプラクティスギャップ」という。せっかく研究してよい成果が得られても,それが社会に広まらないのでは,社会にとっては不利益となってしまうだろう。このギャップを埋め,研究成果の社会実装の実現をめざそうとする新たな潮流が実装科学(インプリメンテーションサイエンス)であり,インプリメンテーション研究である。
そして実装科学を考える上で重要となるのが,臨床現場で日々蓄積されている現実世界のデータ,すなわちリアルワールドデータを中心とするデータサイエンスであり,近年注目を集めている。リアルワールドデータとは,電子カルテデータやレセプトデータ,入手可能な公的データベースなどを指し,看護学の課題解決と発展に向けて大きな可能性を秘めているが,現状ではこのリアルワールドデータが十分活用されているとは言い難い。実装科学の発展と研究の社会実装の実現をめざす上で,リアルワールドデータをいかに活用していくかという課題は極めて重要である。
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