特集 M-GTA その進化と展望
M-GTAを用いた研究の分析プロセスと思考のログ
菊地 真実
1
1帝京平成大学薬学部
pp.573-582
発行日 2020年12月15日
Published Date 2020/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201828
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はじめに
修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下,M-GTA)とは,誰かとの相互作用を視野に入れるということ,さらにこの分析手法が適した領域がヒューマンサービス領域であるということ,また臨床現場で活用できる理論生成を目的としているということから,医療サービスを提供する領域に身を置く臨床家,またはその領域を対象に調査研究を行なっている研究者にとって,自らが抱えるリサーチクエスチョンに光明を与える質的分析手法である。「ぜひ活用したい」と考える研究者も,数多いのではないだろうか。筆者もそんな1人であった。
ところが,実際に分析を行なってみると,オープンコーディングは進む一方で収集がつかなくなり,そうすると当然のごとく概念間の関係がみえてはこず,いつまでも収束しないコーディング作業を前に,途方に暮れてしまった経験が筆者にはある。しかし,分析する上での注意すべき点を理解し,丁寧にデータをみていくことで試行錯誤を繰り返し,結果として,データに基づくグラウンデッド・セオリーを導くことができた。
そこで本稿では,M-GTAを用いた研究の分析プロセスと,そのプロセスにおいて筆者がどのようなことを考えながら分析を進めていったのか,すなわち,“思考のログ”を振り返る。特にコーディングのオープン化と収束化,概念間の関係の検討を中心に,記述を進めていきたい。
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