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1970年代—看護系学術分野のターニングポイント
看護学を取り巻く現状は,「情報社会(Society 4.0)」から,サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,社会的課題の解決をめざす「超スマート社会:Society 5.0(人間中心の社会)」へと大きく変化しようとしている(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html)(図)。筆者が看護学を学んだ1970年代においても,今日の社会変革を迎える状況と同様に,「情報社会(Society 4.0)」の到来に向けた新しい科学の方向性を示す多くの学術への問いかけがあった。その時代を顕す象徴的な著述として,看護学を学ぶ者にも馴染み深いトーマス・クーンの『科学革命の構造』(中山訳,1971)が挙げられる。クーンは「科学を哲学する」という立場で,人間の見方や考え方の前提が変化することで,新たな科学の扉が拓くことをパラダイム論によって論じた。この考え方は多くの科学者や哲学者に影響を与え,ニューサイエンス,ニューエイジサイエンスなどとも呼ばれたムーブメントにも連動していた。
このような科学を哲学する動きは,哲学の分野に,「科学哲学」という新たなジャンルをもたらした。日本では,村上陽一郎氏や浅田彰氏などがその代表的な研究者である(村上,1979;浅田,黒田,佐和,長野,山口,1986)。この背景の中で,本誌『看護研究』も本年で52巻となり,この時期に産声を上げた雑誌として看護研究の発展を支え,多くの斬新な企画や,海外の看護研究事情を紹介し,その後の日本の看護界に大きな貢献を果たしたと考えられる。
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