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私は今回初めて,Sr. Royにお会いしました。先生はすぐに人の輪の中に溶け込まれて,優しく大きく,人を包み込む人格者だと思いました。Dr. Fawcettには約10年前,当時私がナースプラクティショナーとして働いていたWahshington D.C.の小児メディカルセンターでお会いしたことがあります。先生は小児病院の看護教育部からの依頼で,Betty Neumanのシステムモデルについて講演にいらっしゃったのです。気品があり,落ち着いた語り口調で,お話は理路整然としていました。今回,お二人の講演を聞いて感じたのは,それぞれ違いはあるものの,お二人ともに,生涯をかけて看護教育・看護理論に貢献されようとする熱い情熱をおもちであることでした。
Sr. Royは,UCLAの修士課程時に,看護理論家としてのスタートを切ったと話されていました。そして私たち看護師には,抽象的・具体的・帰納的・演繹的に考える能力が必要であり,すべての看護師が,仕事について理論的に考え,そして記録することが必要だと強調されていました。Sr. Royは適応モデルを構築するために500以上の人間の行動を分析し,4つの適応モードを作成しました(生理学的,自己概念,役割機能,相互依存)。このモデルは広く受け入れられ,1974年,そして1976〜2009年の間に5回もの改訂が行なわれています。世界36か国からの招待を受けて多くの講演をしており,日本は今回6度目の訪問とのことでした。21世紀の激変する時代の中で,Sr. Royは適応モデルを国際的位置にあるシステムとして位置づけ,強力な哲学と理論を基盤に,個人と人間全体の安寧のための統合をめざされていました。Sr. Royのつくったveritivityという言葉には,看護師が社会の道徳善に貢献し,人間や環境,地球の価値,そしてあらゆる生命と人間の威厳を支援する意味が託されており,まさに,ヒューマニズムを基本とした人間のWellnessへの可能性と,生命の尊厳を基礎に置く,稀有な考え方だと思いました。
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