特集 EBPと看護教育
研究者と臨床家が対話することの重要性
瀧上 恵吾
1
1岐阜大学医学部看護学科
pp.184-188
発行日 2023年4月25日
Published Date 2023/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202072
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はじめに
「皆さんは臨床家であるとともに、研究家であります」
学部時代の卒業式でこのように学科長が話されたのを今でも覚えている。この言葉を聞いて、それまで、病院の一看護師として働き続けることしか考えていなかったが、いつかは大学院へ進学したいという思いが芽生えた。
大学卒業後は東京都内の総合病院で看護師として働いた。実際に臨床で看護師として働いて、看護師は経験則や直感で業務を行う場面が多いということに気付いた。たとえば、先輩看護師から「この患者さん急変しそう」と言われたことがあり、理由を尋ねると「なんとなく」という返答であった。結局、その患者さんの容態は悪化しなかったので事なきを得たが、なぜ先輩看護師は「なんとなく」の感覚でそうアドバイスしたのか、そのときはわからなかった。他にも先輩看護師からの経験則をもとにしたアドバイスを受けることが多々あった。確かに経験則や直感も患者さんの状態を予測するうえで重要な視点ではある。しかし、なぜその患者さんの状態が悪化しそうなのか、エビデンスをふまえたうえで予測することで、同僚の看護師だけでなく、患者さんやその家族、他職種にも言語化して伝えることができ、より適切な治療につなげられるのではないかと感じた。そういった点からもエビデンスに基づいた実践(Evidence Based Practice:EBP)は看護師が今後さらに臨床で活躍するために、非常に重要な概念になっていくと考えている。
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