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はじめに
本研究では,筆頭筆者の勤務する地域周産期母子医療センターにおいて,出生前診断によって胎児の予後不良が予想された家族へのバースプランを開発し,それに基づいたケアの効果を検討することを目的とした。
本研究に取り組む背景として,自施設は県内唯一,婦人科診療のない母体胎児を専門とした診療科を有しており,出生前診断で予後不良を予想される胎児と母,家族のケアにあたることが多い。このような対象へのケアは,助産師5〜6名で構成された4つのグループで1事例ずつプライマリナーシングを行なっている。その際用いられていたグリーフケアプランは,家族の意思決定支援のためのものであるが,運用方法やケアに対する指針が明文化されておらず,出生前から児が亡くなる前提のように立案されていたり,チェックリスト化されていたりするという問題点があった。そのため,意思決定支援という本来の目的を見失い,妊婦と家族の思いや児への受容過程が置き去りであった。また経験3年目以下のスタッフは,予後不良の児と家族へのかかわりに不安を抱き,一方で経験を重ねたスタッフは,それぞれ自分の経験に基づいたかかわりを行ない,そのかかわりの意図やアセスメントを後輩に伝達していく機会も少ない現状があり,グループや病棟全体でケアが検討されることは少なかった。
大山(1997)は,「予後不良児とその家族に接する際にはより“看護とは”を考え,チームの中の看護婦としての役割を十分考えていくことが大切である」と述べているが,自施設でも,家族が自分たちの気持ちと向き合い,「看護とは?」を考えて出産方法や出産時のケア,および児の治療・ケアなどについて意思決定していく過程を支援できるケアプランが必要だと考えた。その家族らしく児を受容していけるような,家族と看護職がともにつくる家族主体のケアプランは,従来のグリーフケアプランではなく,産まれてくる命と向き合うバースプランとして位置づけられると考えた。
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