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はじめに
介護老人保健施設(以下,老健)では,中間施設という本来の役割とともに,医療を必要とする高齢者の医学的管理,看取りケア,重度認知症高齢者へのケアなど,多様なニーズに合わせた多機能なサービスの提供が求められている。看護職と介護職が協働する老健では,看護職には介護職に対して医療的な知識を提供するとともに,疾患の病態をふまえた具体的なケアの助言を行なう役割がある。医療的ニーズが高まるなかで,職員は高齢者とその家族の要望に応えるべく専門性を集結し,高齢者の生活を支えることに日々向き合っているが,一方で多様なニーズに対応しなければならないことによる困難さがあることも事実である。
筆頭筆者が看護師として勤めるA老健の所属フロアでは,高齢者の個別ケアをチームで継続的に話し合う習慣がなく,カンファレンスを効果的に活用できていない状況であった。また,筆頭筆者が職員を対象に倫理的課題に関するアンケート調査を行ない(石原ら,2012),実践を振り返り,内省の機会をつくったことにより,組織的な倫理教育を行なう必要性が明らかになった。さらに,倫理的課題に気づいても,職員同士の関係を優先させるため,カンファレンスなどで意見を言語化しにくい職場風土があることも把握された。このように,継続したケア検討の場を設けることでケアの周知・統一を図るとともに,職員の倫理的感性を養うという質の向上が,所属フロアの課題であった。
そこで本研究では,ケアプランを見直し,個別ケアの立案・周知を図るカンファレンス(以下,ケアカンファレンス)における継続的なケアの検討を通して,高齢者ケア施設における倫理に適った質の高いケアの実践を確実に行なう方法を明らかにすることを目的とする。
なお,本研究においては,質の高いケアを「包括的アセスメントから,その人らしさを尊重したケアプランを立案・実施・評価していくこと」とする。
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