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はじめに
近年,出産体験と産後1年以内の抑うつや虐待との関連が報告されている。女性がより豊かな出産体験をすることは,母親役割の受容について肯定的になるとともに,児に対する攻撃衝動性を抑制することが明らかにされており(竹原,野口,嶋根,三砂,2009),妊娠・出産への支援は重要な課題といえる。また,妊産婦自らが主体的に行動することが肯定的な出産体験や育児への自信につながる(三砂,竹原2009;松島,2003)といわれており,助産師は女性が,自らの産み育てる力を十分に発揮し,出産・育児に取り組めるように妊娠期から支援を行なっていく必要がある。
筆者が博士前期課程の学生であった2010年当時,全国的に妊娠期における助産師のかかわりは希薄であると報告されており(斎藤,2010),岐阜県内においても,産科集約化による分娩施設の減少,助産師の就業場所の偏在など,妊娠期の助産師のかかわりは希薄であるといわざるを得ない状況であった。
筆者は,大学教員として研究・教育に携わる中で,助産師による妊娠期からの継続支援の必要性を感じていた。さらに,地域で活動する助産師(以下,地域助産師)の複数が,産後の育児相談に対応する中で,「産後からのかかわりでは遅い。妊娠中から助産師がかかわる必要がある!」といった同様の課題意識をもっていると把握していたことから,博士前期課程において,「主体的な出産・育児に向けて地域助産師が行なう妊娠期の支援」に関する看護実践研究に取り組み,筆者自身も地域助産師の1人として,地域助産師らとともに「女性の主体性を引き出す妊娠期の支援プログラム」を考案し,プログラムの実践,効果の評価を行なった。本稿では,看護実践研究のプロセス,および看護実践研究としての本研究の意義と今後の展望について述べる。
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