増刊号特集 看護と哲学─共同がもたらす新たな知
慢性病者の経験の記述に関する一試論─“第二の人生”が主題となった語りを手がかりに
細野 知子
1
1首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士後期課程
キーワード:
慢性の病い
,
語りの方法
,
経験の記述
,
現象学
Keyword:
慢性の病い
,
語りの方法
,
経験の記述
,
現象学
pp.300-307
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201263
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1.問いの所在
慢性病者の“経験そのもの”とは?
東さん(仮名)は,2013年にインタビューをしたとき,定年退職を間近に控えた会社員であった註1。彼は,30年近く前に2型糖尿病と診断され,およそ20年,主治医のもとへ毎月通っていた。自立した子どもたちとはたまに連絡を取り合いながら,最近は1人で暮らしている家の中の「整理」をいろいろと考えていた。
そんな東さんは,約10年前に,生活における病いの経験を記述する私の研究(細野,2005)に参加し,長時間にわたって病いの経験を語っている註2。その研究は,私自身が経験した,入院を繰り返す糖尿病者への看護の難しさから,その生活を知りたいという動機に端を発したものであった。そこでは,東さんらの語りを通じてライフヒストリーを構成することで,生活における病いの経験を記述した。
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