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はじめに
今回のJournal Watchは,International Journal of Nursing Studies(IJNS)誌の第51巻,BMC Health Service Research(BMC HSR)誌の2014年4月掲載分の論文が対象になりました。IJNSより7篇,BMC HSRより5篇,合計12篇が参加者から発表され(質的研究5篇,量的研究5篇,混合研究1篇,文献レビュー1篇),それぞれの研究内容や研究手法に関して議論が行なわれました。
その中でも,今回特に参加者の関心を集めて議論された論文は,イギリスの病院で実施された,看護師や看護管理者の組織内の信頼感の認識のプロセスを構成する要素を明らかにするための質的研究論文でした。イギリスの国民保健サービス(National Health Service ; NHS)は国営の医療サービス提供制度ですが,民間会社に雇用された病院管理者がマネジメントを実施するという,新たなマネジメント方法を導入しているNHSの総合病院が数多くあるという背景が,この論文にはあることをお伝えしておきます。これらの民間会社に雇用された病院管理者は,看護師を含む医療のバックグラウンドをもっていない,またはたとえもっていたとしても臨床での経験がほとんどない場合が多いそうです。
これらの病院管理者は,通常は病棟内のマネジメントには関与しませんが,彼らが行ない関与するトップレベルまたはミドルレベルのマネジメントが病棟内に多くの影響をもたらす可能性があることは容易に想像がつきます。実際に本文中でも,看護師たちが「看護や看護師が軽視されている」と感じるようなマネジメント,例えば単純に看護師の人数を減らしその分を看護助手に置き換えること,まだ状態が不安定な患者を一般病棟に転棟させることなどにより,組織や病院管理者に対して低い信頼しか感じられなかった結果として,多くの看護師が病院を去るだけではなく,看護師として働くことさえも辞めてしまうということが対象者の語りとして記述されていました。
参加者からは,医療の現場を熟知していない人がマネジメントや患者ケアに直接影響することに関する判断を行なうことに対する疑問が出されました。しかしその一方で,看護師としての主張の正当さをどのように示していかなければいけないのかについての議論も行なわれました。
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