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はじめに
筆者は,平成23年4月1日から平成26年3月31日までの3年間,文部科学省高等教育局医学教育課で,看護教育専門官として看護学高等教育行政に携わった。看護教育専門官は,看護師等の人材確保に関する法律第三条の基本指針のうち,同条第二項第二号に掲げる事項,「看護師等の養成に関する事項」に関する事務をつかさどる立場にある(参考:文部科学省組織令第六条第十三項)。また,文部科学省組織令第四十八条には,地方公共団体の機関,大学その他の関係機関ならびに教育関係職員等に対し,教育に係る専門的,技術的な指導および助言を行なうことと規定されている。
これらの所掌業務に基づき,筆者は3年間,指定規則の改正に伴う教育課程の変更相談や国立大学ミッション再定義等,看護系大学の教職員と,教育や人材養成の方向性について意見交換する数多くの機会を得た(石橋,辻,西尾,2012;文部科学省ホームページhttp://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1341970.htm)。いま振り返れば,筆者は医学教育課の係員とともに日々相談対応する中で,各大学の教育理念を確認し,多様化する看護系人材養成目的について,今後の看護学の発展のために,社会のために大学が貢献できることは何か,そのためにはいまどのような人材を養成すべきか,常に自分自身に問いかけていたように思う。
一方,大学における看護系人材養成のあり方については,2年にわたり検討会で継続審議され,平成23年3月に最終報告が取りまとめられた(文部科学省ホームページhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/40/toushin/1302921.htm)。最終報告では,今後の検討課題として大きく2点がまとめられている。1点目は,教員の充実や実習環境の充実,博士課程教育の充実といった,教育の充実に関する課題である。2点目は,看護学の分野別評価の推進や長期的な教育成果に基づく評価の実施等,看護学教育の質保証の推進である。また本報告では,修士課程の課程数が充実してきたことや学生の多様化が進んできていることを踏まえ,各大学院においては,社会のニーズや自大学院の教育資源に基づき,養成する人材像を一層明確化することを通じて主体的に機能分化を図っていくことが望ましいとしている。
本稿では,筆者が文部科学省在任中に今後の看護学の発展を考えるにあたり,看護系大学院の役割が教育者・研究者の養成においてますます重要になると考え,その現状を分析し,見いだされた課題に取り組んだ内容を紹介する。
なお,本稿における「看護系大学」とは,「学士課程において看護師等の国家試験受験資格を取得させうる教育課程を置く大学」をいい,「看護系大学院」は,「基礎となる学部に看護師等の養成課程を置く大学院」を指す。
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