焦点 Crisis Theory
研究
終末期の夫をもつ妻への看護—死亡前・死亡後の妻の心理過程を通して援助を考える
鈴木 志津枝
1
1神戸大学医療技術短期大学部
pp.399-410
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200989
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はじめに
近年,ターミナルケアへの関心が高まるにつれて,終末期患者の家族への援助についても,注目されるようになってきた。それに伴い,終末期患者の家族や残された家族の心理や心理過程,ニードに関する研究が,重要視されるようになってきた。
死別と悲哀反応に関する研究は,1940年代より始められ,多くの研究により悲哀の心理過程が明らかにされている。Lindemann1)は,正常悲哀の心理過程は,1)身体的苦痛,2)死者のイメージへのとらわれ,3)罪責感,4)敵意反応,5)普通の行動様式の喪失,の5段階からなると述べている。さらに,Engel2)は,悲哀の心理過程を,1)ショックと不信,2)現実認知,3)回復の3段階で表わし,これらの段階を辿らなければ,悲嘆より立ち直ることができないことを明らかにしている。Peretz3)やCaplan4)は,この悲哀の心理過程は,必ずしも死後より起こってくるのではなく,死を予期した時期より始まり,正常悲哀の心理過程と同様の段階を辿ると述べている。またFink5)は,激しい悲嘆を伴う喪失を危機をもたらす状況と把え,その状況に直面した個人が適応に至るまでの過程を,1)衝撃,2)防御的退行,3)承認,4)適応の4段階で表わし,危機より早期に回復するための危機介入の方法を示している。
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