研究
脳神経疾患患者における意識—排尿関係図による排尿自立達成時期の予測に関する基礎的研究
小島 通代
1,2
1神戸市立看護短期大学
2現:東京大学医学部附属病院
pp.161-189
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200871
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Ⅰ.緒言
排尿障害は,脳神経疾患患者のリハビリテーションと密接に関係し,排尿の自立は,臨床看護領域における重要な関心事であり,課題でもある。排尿障害は,排尿行為に関する異常の総称であり,その内容は,排尿困難,尿閉,頻尿,尿失禁,遺尿などであると,医学において定義されている1-2)。本研究においても,狭義の排尿障害はこの定義に従う。本研究で用いられるおもな用語の説明を,表1に示した。排尿障害の発生・進行の要因は多元的であり,下部尿路の支配神経の障害,膀胱壁・尿道括約筋の病変,尿道の閉塞性病変1)のほか,心因性の排尿障害3)も指摘されている。下部尿路の支配神経の障害の中では,脊髄損傷患者の排尿障害がよく知られているが,脳血管障害などの頭蓋内疾患患者においても,その発生頻度は高いと報告されている4-7)。
他方,意識障害(表1)は,脳神経疾患患者におけるきわめて重要な症状である。神経学,脳神経外科学においては,外界からの刺激と自己の内界からの刺激に対して正確な認識の保たれた状態を意識といい,これが害された状態を意識障害という8)と定義されている。本研究においても,この定義に従う。意識障害は,脳の器質的病変,脳以外の原因による意識中枢の機能的な障害,および心因によって起こる9)とされている。
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