焦点 科学性と個別性
解説
科学の中の一般性と個別性
西脇 与作
1
1慶応義塾大学文学部哲学科
pp.337-344
発行日 1985年7月15日
Published Date 1985/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200841
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1.はじめに
科学理論の条件の1つとして,それが普遍的,一般的であることが,よくあげられる。できるだけ一般的な正しい原理から出発し,より多くの現象を説明できるような理論が,よりよい理論である,というのが常識である。一方,それら理論を用いる技術者や,患者を扱う医師にとっては,その対象は常に個別的,具体的なものであり,しばしば科学理論の一般性追求と矛盾するかのような状況が生じている。その場合,科学理論に合致しない事例は,簡単に例外として処理されがちである。ここでは,この一見すると対立するかのようにみえる科学の中での一般的知識と個別的事例を考え直し,実は両者は対立するものではなく,互いに相補的に科学を科学たらしめている特徴であることを示すことによって,科学とそれを実践する私たち人間の関係をとらえ直してみることにしたい。
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