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患者のもつ身体的要因が看護行動に及ぼす影響を考える—頭頸部腫瘍患者への看護場面をふり返って
今沢 和子
1
1聖マリアンナ医科大学看護専門学校
pp.219-225
発行日 1984年7月15日
Published Date 1984/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200798
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はじめに
頭頸部腫瘍の患者は,人間にとってその生命を維持していく上で不可欠な呼吸・食事・発声・感覚などが障害されることが多く,そのために生じる日常生活上の苦痛は,肉体的にも精神的にも,はかりしれないものがあると思われる。また,そうした中で,徐々に末期を迎える患者は,次第に周囲の人々との意思疎通も困難となり,孤独感の中で一人悩み苦しんでいることが多い。私の看護体験においても,そうした悲惨な状況の前に大きな困難さと無力感を覚えるとともに,それは他科における悪性腫瘍患者の看護の困難さとは異なるものを感じさせた。このことから,頭頸部腫瘍における患者の身体的状況というものは,単に患者の悲惨さに止まらず,看護婦の心情や,その看護行動にも多くの影響を与えているのではないかと推察される。ジュラードは,看護婦の臨床態度について「かたくなな人間関係行動は『性格のよろい』と呼ばれ,苦しんでいる患者や要求の多い患者との反復的な出会いによって喚起される」1)と述べている。すなわち,患者の身体に起因するものが看護婦を不安にさせ,その看護行動に影響するといえるのではないだろうか。
そこで,本研究においては,頭頸部腫瘍患者への看護行動を分析検討する中で,患者の身体的状況が与える影響について探ってみたいと考える。
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