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入院による生活の変化と適応
栄 唱子
1
1熊本大学教育学部特別教科(看護)教員養成課程
pp.44-53
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200781
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はじめに
新しい環境に適応することは,健康な人にとってさえ,さまざまな不安や緊張をもたらすといわれる。しかも,身体的にも精神的にも病める患者であれば,そこには,はかりしれない苦悩が存在するに違いない。人にはそれぞれの生活史があり,生活様式ただひとつを取り上げても実に多様であることは想像に難くない。なのに,健康が破綻され,入院を余儀なくされたときに遭遇するのは,「何時にベッドにはいり何時に起きるかも命令による。たとえ彼には7時に夕食をとる習慣があっても,食事係の必要性によって,5時に食事を供されることが要求される」1)ように,そのほとんどは,日課や規則として定められた半ばルーチン化された生活なのである。入院による束縛に対しては「その人が健康であった日々とできるだけ違わないように保つことこそ看護の目的である」2)ことは,理念としてまかり通っているのであるが,はたしてその実態はどうなのであろうか。
看護者にとって入院生活はきわめて日常的であるが,患者にとってのそれは非日常的な営みの連続なのであるから,たとえ適応できない事態が生じたとしても,当然の理なのであろう。
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