焦点 数量化が内包する諸問題
解説
人間科学における数量化の限界
吉田 光雄
1
1大阪大学人間科学部
pp.270-274
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200766
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はじめに
ある科学の進歩と円熟の度合いは,しばしばその科学が数学をどの程度まで使いこなしているかによって判断される,といわれている1)。しかし,自然科学と人文・社会科学とでは多少事情を異にしているのかもしれない。極度に抽象化された理論の体系を用いて現象を普遍化することにより,科学は今日まで前進してきたのであるが,人間に対する省察は,数量化や数学的演繹とはなじまない一面をもち,歴史的には,むしろ哲学や文学のジャンルで論じられてきたことは周知のとおりである。
ところが近年,数量化の波はコンピュータの普及と相まって,猛烈な勢いで人文・社会科学にも押し寄せてきている。
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