焦点 看護研究における数量化の考え方
解説
数量化の意味
沢田 允茂
1
1慶応義塾大学文学部哲学科
pp.161-166
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200650
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私たちの知覚の風景は,私を中心とした構造をもっている。視覚に現れる空間は私を中心として「遠-近」,「上-下」,「左-右」といった構造の規準の中に位置づけられる。これらの規準を組み合わせて,私たちは空間の中に現れる事物の「大-小」を定めるし,もっと細かい区別をしようとすれば,遠近,上下,左右の規準を結ぶ「線」というより細かい規準(これは前に述べた諸規準と同じように,我々の心の中のスケールであって,外界の事物の一部分としてあるのではない)をつくって,三角形,長方形,あるいはそのヴァリエーションとして円形といった構造化を行なう。これらの構造化は,物体としての私の身体をも含めて,私の風景の中に現れてくる事物の構造化のための諸規準である。そしてこれらの諸規準に共通な原則ともいうべき最終の,あるいは最も共通な要素となっている規準というものを探してみるならば,それは長さあるいは「延び広がる」という意味での外延extensionということになるだろう。
しかし私たちの知覚の風景の中に現れてくるものは,私の身体を含めた物体だけではなくて,私の身体という物体の内的な状態(私の身体以外の物体の内的状態は私には知覚できないから,直接には私の知覚の風景の中に現れてこない)もまた,私にとって直接に知覚される以上,この風景の中にある意味で現れてくるはずである。
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