焦点 看護研究における数量化の考え方
解説
心理学における数量化の歴史と問題点
浅井 邦二
1
1早稲田大学文学部
pp.180-184
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200653
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1.心理学における数量化の歴史
心理学が現在のように科学的心理学として誕生したのは,約100年前のことである。当時,生理学者,物理学者であった人たちが,その研究領域の中で取り扱った感覚や知覚の問題に実験的方法を採用したことから,心理学に実験法が導入され,やがて心理学実験室が創設され,哲学から分岐した学問領域として心理学が生まれるに至っている。
心理学における数量化の歴史も,大体,そのころに始まるといってよい。最初の実験心理学の本といわれる「精神物理学要論」(1860)を著したフェヒナーは,有名な「感覚の強さは刺激の大きさの対数に比例する」というフェヒナーの法則を唱え,身体と精神との関係についての理論,すなわち精神物理学の樹立をめざした。そして,この学問を進めるためには感覚を数量的に表すための測定法を考えることが必要であるとし,感覚が生じるか,生じないか,またある感覚が他の感覚より大きいか,等しいか,小さいか,が弁別できることを基本にして,精神物理学的測定法として,最小弁別法,当否法,平均誤差法を考案した。現在,極限法,恒常法,調整法として用いられている測定法はこれに由来するものである。
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