焦点 現場における研究の推進とその限界
Conference・素材
―事例研究―第一子に障害児をもつ妊婦の心理と指導—母子関係に問題のあった妊婦への家庭訪問での援助過程を通しての検討
大森 絹子
1
1淀川キリスト教病院
pp.270-277
発行日 1981年10月15日
Published Date 1981/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200669
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
母子保健管理の最終目標は,母と子そして生まれてくる子の健康を守り,健全な児童を育成することにある。母子保健活動の結果を評価する手段としては,①自然死産率 ②妊産婦死亡率 ③周産期死亡率 ④新生児死亡率 ⑤乳児死亡率などがあり,これらすべてを低下させることに努力が向けられねばならない1)。そのためには,日常の女性の健康管理,性教育,婚前教育,乳幼児健診,妊婦管理が重要であり,その中でも最も直接的に影響するのが,周産期における妊婦の管理であると考えられる。たいていの女性にとって,妊娠ということは,積極性から消極性へと揺れ動く,強くまた変化に富む情緒の一時期であり,しばしば対立する感情が併存する時期でもある2)。どの妊婦にとっても最大の目標は,正常な子供を産むということである。しかし妊婦の多くは,赤ん坊が異常でないか,また何か自分の内部に潜む弱点が子供に出ないかと,ひそかに恐れを抱くものである。特に第一子に障害児をもつ妊婦,死産を経験した妊婦,奇形児を出産したことのある妊婦の場合,問題はなお一層複雑で,妊婦管理の充実というものが必須となってくる。それを適切に行なえるかどうかが,母子保健管理のキーポイントになることが多い。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.