講座
双胎児性と妊婦の心理
尾島 信夫
1
1慶応大学
pp.26-29
発行日 1957年12月1日
Published Date 1957/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201384
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私達の取扱う妊産婦は複雑な感情の持主であることは今更云う迄もないことなのであるが,現在の産科学は殆んど肉体的なことのみを講じているために,熱心に勉強し研究した若い人達ほど,自分達の扱つている対象は心のある人間だということを忘れ易いのではあるまいか? 勿論心身症という言葉を心得ている人も多いであろうし,リード氏の自然分娩法や所謂精神予防性無痛分娩法等に於ては産痛に関連した妊産婦の心理的な面を教えている.併し,私はもつと広い面で妊産婦の「心」をとりあつかう心掛けが大切だと思う.
助産婦には私達男子の産科医と違つて妊産婦の心の動きをもつと身近に感じとることが容易ではないかと思う.或いはそれが却つて好ましくないこともあるかもしれない.例えば分娩時に(消毒を充分にするため)完全に剃毛してしまうことを妙に助産婦が嫌がつたり,病院勤務者であり乍ら,腟会陰切開を何だか避けたがる助産婦のあるのは(私の想像では)女性として産婦を余りに自分に近く感ずるため,私達産科医の様に純理性的に割切れぬ感情が働いているのではないかと思う.
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