焦点 看護における基礎研究
研究
現行消毒法の再検討—超音波洗浄装置による手指消毒法について
滝 幸代
1
,
松岡 淳夫
2
1北里大学病院
2千葉大学教育学部看護課程
pp.275-281
発行日 1978年10月15日
Published Date 1978/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200563
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1.はじめに
患者に安全な環境を提供し,安全な方法でケアを行うことは,看護の重大な役割である。特に,一般社会に比べて病原微生物に汚染されているのであろう病院という特殊な環境の中で,多くの抵抗力の弱い患者を感染の危険から守ることは,厳重に実施されなければならない。感染の防止にはいくつかの方法があるが,特に中でも,医療従事者の手指消毒は感染媒体として,または自己の感染の問題として極めて重要な要素といえる。
看護における手指消毒は,看護処置,手術介助,診療介助など病院のあらゆる場面で行われるが,最も基本となる無菌的手指消毒法は,長い間Furbringer氏法を基本として行われてきた。近年においては,短時間で確実な消毒が得られるとされる超音波洗浄装置が広く用いられるようになってきている1)。しかし,最近では,その効果を過信しすぎているという論2)もみられる。市販装置のカタログ広告"手術前手洗・器械器具滅菌消毒30秒"に基づき,超音波洗浄装置使用0.02%ヒビテン液併用による30秒間手洗い後の消毒効果を,私の追試的予備実験においてみたが,その効果には疑問が残った。すなわち,手指の選定した部位に大腸菌液を塗布して行ったこの条件による消毒効果では,全5例25検体中菌陰性となったものは1検体のみで多くの菌を残し,部位によっても残存菌数に差がみられていた(表1)。
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