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はじめに
看護学は実践の科学として歩を進めてきた。看護系学会が数多く設立されて研究活動が活発に行なわれ,数多くの論文が学会誌に発表されている。看護学・保健学を専攻する博士後期課程も開設されて博士の学位を有する人材も増加し,量的・質的な研究手法が実施されている。
看護研究について,医師から質問を受けたことがあった。医師が行なう研究は診断法や治療法に関する基礎研究や臨床研究であり,その成果はすべて医療を受ける患者に還元しているが,看護師による研究は,その成果を患者に還元できているのかといった率直な疑問であった。また,ランダム化比較試験(randomized controlled trial ; RCT),多施設共同試験でなければ,エビデンスとしては不十分であるとの批判をも受けてきた。これらの批判は,看護研究は十分なエビデンスのある成果を得て,患者に還元できているのかという課題を示している。
看護研究を概観すると,実験研究は少なく,質的研究,調査研究,尺度開発等が大半を占める。質的研究は半構成的面接などによって得られた発言をデータとして,帰納法的にカテゴリ化する手続きを用いて患者の意味世界を明らかにしている。調査研究はある課題に関する現状を把握し,データ間の関係を探索し,課題に影響する要因等を明らかにしている。また,アセスメント指標の開発や尺度開発は患者の状態を判断する指標を与え,問題のある患者をスクリーニングする方法等を明らかにしている。これらは,患者の状態を理解する研究であり,アセスメントに寄与すると考えられる。
では,看護の方法論は確立してきただろうか。看護診断に対する看護介入分類(Nursing Interventions Classification ; NIC)も開発されつつあり,必要なケアの項目が示されている。しかし,看護の方法論は,個々の看護技術の適用というよりも目的を指向する一連のプログラムとして開発され,そのプログラムを,さらなる研究によって改善することが重要であるように思われる。
本稿では,そうしたプログラム開発の方向性,ならびにプログラムを開発するために随伴性のアレンジとして行動に介入する視点,そして看護場面でのシングルケース研究法(後述)と,行動に着目した食事指導プログラムに言及する。
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