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はじめに
筆者は,日本看護科学学会(Japan Academy of Nursing Science;以下,JANS)学術・研究情報委員会が2012年に実施した「若手看護学研究者の研究実施状況に関する調査」に委員の一員として携わった。
本特集「看護学において若手研究者をどう育てるか?」において,前号では指導的立場にある看護学研究者の方々が,若手研究者の育成について論じられている。若手看護学研究者を取り巻く環境が必ずしも良好なものではないことを感じると同時に,諸先輩方がその問題を認識され,学協会の理事長や,看護系大学の学部長,学術雑誌の編集委員などのさまざまな立場で若手看護学研究者の育成についてさまざまな取り組みを検討していただいていることが理解でき,心強く感じた。
この数年,筆者は修士課程,博士課程の大学院生の研究指導を担当するようになり,試行錯誤しながら,大学院生との経験から学びつつ,指導に取り組んでいる。研究指導をする立場になり,自身の指導や研究活動を内省する中で,過去に自身を指導してくださっていた先生方が,学生(筆者)に指導内容が十分に伝わらない,あるいは学生が指導内容を理解できないというもどかしさを感じていたのではないかと思いをはせることがある。また,現状で若手看護学研究者を取り巻く環境が満足できるものではないといっても,過去と比較したとき,看護系大学・大学院の増加,研究に活用できる情報通信機器の発達,国際交流を容易としたグローバル化,社会からの看護学への期待の高まりなど,研究を行ないやすい環境は著しく整ってきているともいえる。それらのことを考えると,道なきところに道をつくるかのように,日本の看護学の発展に寄与されてきた先輩方の中には,若手看護学研究者の研究活動に対して期待とともに物足りなさや歯がゆさを感じられている方が多くいらっしゃるのではないかとも推察する。多くの方々に若手看護学研究者の支援策を検討していただいたとしても,若手看護学研究者が,自立した研究者として他領域と肩を並べて国際的に価値ある研究成果を発信できるようになるためには,与えられた環境の中でひな鳥のように育ててもらうことを待っているだけではなく,主体的に成長していくためのアクションを起こし,試行錯誤を繰り返していかねばならないことは自明であるだろう。
そこで本稿では,「若手看護学研究者の研究実施状況に関する調査」に携わり,若手研究者の育成について考えはじめた若手看護学研究者の1人として,育てていただくだけでなく,若手看護学研究者がいかに自ら育っていけるかについて,報告書に示された結果を参照しながら考えていきたい。
なお本稿で述べることは,日本看護科学学会研究・学術情報委員会や筆者の所属組織の見解ではなく,筆者のごく限られた経験に基づいて形成された個人的見解であることを申し沿えておきたい。
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