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指定発言
中山 クリス・タナー先生は本日の講演で(pp.366-373),研究とは,どのような現象を捉えて,どのような目的で行なうのかが大事であり,研究方法はその目的に沿って選択していくものであるということをおっしゃいました。では研究方法を選択する際,自分が博士課程で指導を受けようと考えている先生がその方法論に熟達していなかった場合にどうするか。この問題も非常に大きいと思っています。私は質的研究方法,特に現象学的アプローチについて指導してほしいと,他の大学院も含めてたびたび要請を受けるのですが,ほとんど引き受けておりません。なぜなら,質的研究の多くはinteraction(指導者との話し合い)によってつくり上げていくものだからです。そこから創造していく部分が非常に大きいだけに,一定の時間を費やして研究するには,やはり自分の大学の身近にいる先生を指導者にしたほうがいいわけです。外部の教員は,完成した論文の査読はできても,それ以上のことは非常に難しいのではないかと思うのです。
特にメンタリングという観点から考えると,日本の大学にはそれほど多くの教員がいないので,自分の選んだ主たる指導教員がその方法に熟練していなかったときは,メンターシップが成立しにくい。さらに米国と日本は状況も異なるので,そこをどう乗り越えていくかが大きな課題だと思います。チームを組んで一大学内でできればよいですが,それもなかなか難しい。ですから私は,主たる指導教員が得意とする方法にできるだけ従うように言っています。指導教員とのinteractionは非常に大事で,指導する者は学生の発想が豊かになるように指導しなければいけません。指導し,話し合う中で,新たな発見がどんどん生まれていく。そういう指導ができれば一番いいかなと思っています。
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