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チェルノブイリ原発事故後の健康問題
山下 俊一
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1長崎大学医学部原爆後障害医療研究施設分子医療部門
キーワード:
チェルノブイリ
,
放射線
,
小児甲状腺がん
Keyword:
チェルノブイリ
,
放射線
,
小児甲状腺がん
pp.665-667
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904419
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1986年4月26日未明,人類史上最悪の原発事故が旧ソビエト連邦ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子炉4号炉で発生した.既に14年が経過したが,数百万Ciの放射性降下物による環境汚染と一般住民の健康問題,さらに除染作業に従事した消防士や軍人の健康問題など懸案事項は今なお未解決のままである.むしろ経済状況の悪化や記憶の風化とともに,急性放射線被ばく問題から,晩発性障害に現地では論点が移りつつある.しかし,日本では,先の東海村臨界事故で再度急性放射線障害やその対策が,チェルノブイリ原発事故を教訓に問題となっている.現地の住民たちは,事故後長年にわたり放射能の目に見えない影響に対して,不安を持ち続けなければならない被害者意識のなかで,精神身体影響問題が大きな関心事となっている.それでは今いったいチェルノブイリ周辺では何が起こっているのか,筆者らの10年にわたる現場での医療支援活動を基に,最近の知見について小児甲状腺がんの多発問題を中心に紹介する1,2).
1996年4月の事故後10周年では,IAEA/EC/WHOの国際共同会議での報告どおり"チェルノブイリ周辺では1990年から激増している小児甲状腺がんのみが,唯一事故による放射線被ばくの影響である",と世界中の科学者が合意している3,4).
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