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看護と工学との連携…とは?
試しに医中誌Webで「看護」と「工学」の論理積を検索してみると,2537件の文献にヒットする(検索日:2011年6月17日)。かくも多くの文献が抽出される事実からは,看護学と工学との連携は想像以上に進んでいるかのような印象を受ける。しかし,もう少しつぶさにみてみると,筆頭著者の所属名に「工学」の文字が入っているものが1060件,そのうち「臨床工学」が524件だ。学術誌名に工学の文字が入っているものも300件ある。もちろん,そのなかには看護と工学との連携を存分に効かせた研究もあるだろうが,看護と工学の連携かどうかにかかわらず,単に「工学」という文字を含む所属名や学術誌名のゆえに数多くの文献が抽出されている可能性が否定できない。
でもちょっと待て。そもそも看護と工学との連携とは何なのだろう。自分が書きはじめておきながらそれに疑義を呈するというのもどうかと思うが,改めて看護と工学の連携について考えてみると,どういう場合が連携でどういう場合が連携でないのかが,はなはだ曖昧なことに気づく。共同研究者のなかに臨床工学技士がいるだけでも看護と工学の連携といえるのか。もし,それが違うとしたら,連携と謳うための必要条件は何なのか。いや,それ以前に「看護」と「工学」とが連携する主体同士なのかということからして心許ない。学問同士の連携という意味でなら「看護学」と「工学」ということになるのだが,実際「看護学と工学の連携」と声に出して読んでみると,韻を踏んでいるにもかかわらず,字余り感があるし何かしっくりとしない。どうやら自分は無意識的に学問同士の連携ではなく,もとから「看護」と「工学」の連携を想定していたふしがある。自分の勝手な思い込みかもしれないが,看護と工学の連携というフレーズには,看護の局面にエンジニアの力を借りて,もしくはエンジニアの力を借りないとできない「何か」を適用して新たな知見を生み出す,という意味合いを与えていたのだろうと推測する。
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