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はじめに
看護の領域では,Benner,Leininger,Watsonのように,ケアリングを看護の本質として看護学の中心的概念に位置づけている理論家がいる一方で,Rogersのように,それは看護に特有なものではなく,どこにでもあるとする理論家もいる(Smith, 1999)。このように,学問上の位置づけや意義についての見解は異なっている。その背景には,そもそもケアリングの定義に関するコンセンサスが得られていないことがある。ケアリングは,他者からはみえにくく,その実態がつかみにくい概念であり,その捉え方は,能力,態度,特性,行動,関係性のプロセスなどといったように一様ではない。また,用法も副詞的,形容詞的,動詞的,名詞的とさまざまな用いられ方をしている。
では,こうした複雑かつ曖昧なケアリングの概念を測定することは可能であろうか。可能であるとすれば,何を測ればケアリングを測ったと言えるのだろうか。この難題にチャレンジした1冊の本がある。それが,Watsonの著した『Assessing and Measuring Caring in Nursing and Health Science』(2001)であり,2008年には第2版が出版された(Watson, 2008)。初版は,『ワトソン 看護におけるケアリングの探求─手がかりとしての測定用具』として邦訳されている(Watson,2001/2003)。本書は,測定用具を手がかりとしてケアリングの本質に迫ることを意図しており,ケアリングを量的に測定することは可能なのかという疑問や,人間の複雑な現象を明らかにするために測定用具の使用を検討している人に対して,有用な情報を提供してくれるであろう。
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