焦点 現象学的研究における「方法」を問う
患者を1人の人として理解する―Eさんの生活経験の現象学的記述より
石田 絵美子
1
1大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
キーワード:
患者理解
,
生活経験
,
現象学的記述
Keyword:
患者理解
,
生活経験
,
現象学的記述
pp.41-48
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100489
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
第1節
研究の背景
本稿は,「患者を1人の人として理解する」ことを,ある患者の経験の記述を通して試みたものである。
今日,看護研究においては,量的研究では捉えられない人間の全体性や固有性等を理解する必要性から,質的研究法による経験の探求が積極的に進められている。そこでは,さまざまな方法論のもと,いずれも共通して,対象者ではなく研究参加者と位置づけられた人たちを,その人の文脈とともにその人の視点から理解することが試みられている。そしてその結果,1人ひとりの患者をみていくことや,患者を1人の人として理解すること,また患者の人間としての尊厳を重視すること等の重要性が指摘されてきた(ホロウェイ&ウィーラー,2002/2006;トラベルビー,1971/1974;トーマス&ポリオ,2002/2006;中込,2004;広瀬,1992a ; 1992b ; 1993)。実際,筆者は修士論文註1において筋ジストロフィー病棟註2に暮らす人々の生活経験の記述を試みたが,その記述においても彼らを1人の人として理解することの重要性を指摘してきた。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.