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はじめに
本稿では,「risk perception(リスク認識)」という概念(concept)に関する概念分析の最初の一歩である概念の明確化のプロセスに含まれる概念精査(critical examination of the concept)の概要を紹介する。
この概念の明確化のプロセスでは,循環器疾患のリスク認識とその後の行動変容,という筆者の研究テーマにおいて主要概念となる「risk perception」という概念が,どのように理解され論じられてきたのかを,看護学や関連する学術領域から文献を選出し,その文献の記述内容を批判的に吟味し統合して,この主要概念を現時点ではどのように論じることができるのかを明確にしていく作業が含まれる。この概念精査は,Walker & Avant(2005/中木・川﨑訳,2008)の,8段階の概念分析のプロセスにおける,「概念を選択する」「分析の目的または目標を確定する」「見つけた概念のすべての使い方を特定する」「その概念の典型的な性質や特質を確定する」という4つのプロセスに呼応する。
本稿では,「risk perception」という概念に関する現在と過去の視座を明らかにするために,「risk perception」の概念に関する資料を批判的に検討した。辞書に記載されている言葉の定義は,対象とする概念を説明するには不十分であるが(Chinn & Kramer,1999),まず,筆者自身の英語力を補うためにも,Webster's New World College Dictionary(3rd ed.)(1997)から「risk perception」の概念に関連する用語を調べた。また本稿では,一般的意味で用いた場合と概念を示す場合を区別するため,概念を示す表記は「」とした。
「risk perception」の概念に関連する文献としては,“risk”,“perception”を検索キーワードとして,Ovid,Health STAR,MEDLINE,CINAHL,PsycINFO(via EMSCO)を含むデータベース検索により収集した。得られた文献の要約を詳細に検討し,1970年から2000年に発表された医学,遺伝学,栄養学,心理学,公衆衛生学,社会科学,看護学の領域から「risk perception」に関する20文献を選出し,概念精査を行なった。
本稿の最後に,この概念精査の結果をまとめた表と,概念精査の結果推定した主要概念「risk perception」とそれに関連する要因を,antecedents(先行要因),consequences(帰結),mediators/modifiersに分類し,その関連性を表わす図を示している。
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