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はじめに
医療の現場は,慢性疾患や後遺症などのさまざまな健康問題を抱えながら生活することを余儀なくされる患者と家族,先天性疾患や障害をもつ患者と家族など,大きなライフイベントを経験している人々が数多く存在する。
そのようななかで,看護職は病気から生じる身体的症状や治療を継続する上での専門的知識やセルフケアなどの身体面での援助だけでなく,患者や家族の精神面での援助も同時に求められている。看護職は,予測しない病気によって精神的に大きなダメージを受け,ストレス状態に陥り,なかなか立ち直ることができない患者や家族に対して,その現実を受けとめ主体的に取り組んで,患者や家族自身が病気によって生じた困難な事態を乗り越えられるように支援することが必要とされている。看護において,ストレス状態の緩和や長期化の軽減を図るメンタルヘルスへの予防的ケアを検討することは,重要な課題であると考えられる。
メンタルヘルスにおける看護ケアでは,患者や家族の精神的な状況をできるだけ早期の段階でアセスメントできること,また患者や家族ができる限り過剰なストレス状態に陥らないように支援すること,たとえストレス状態になってもそこから精神的に立ち直ることができるように支援することが必要である。そのために,看護職はどのように援助すればよいかを検討することが重要であると考えられる。将来的には,患者や家族に対して,それらの困難な状況を乗り越える力を育成できるようなプログラム,すなわち患者や家族自身のもつ力を育成あるいは強化する直接的な支援方法が開発できれば,ストレス状態の回避や軽減,あるいは立ち直りを促進する予防的ケアにつながると思われる。
レジリエンス(resilience)は,「弾力性,回復力,立ち直り」などを意味し,心理学の分野で注目されている概念である。医療・看護の分野でも,病気から生じた大きなストレス状態からの立ち直りあるいはストレス反応の緩和という観点で,この概念に注目し,その応用について検討することが,メンタルヘルスにおける有効な手だてを検討する糸口になる可能性があると考えられる。
そこで,本稿では,レジリエンスについて概説し,現在取り組んでいる研究成果を示しつつ,レジリエンスの看護ケアへの活用について述べてみたい。
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