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はじめに
研究倫理の審査体制は,研究者の倫理と並んで大変重要な課題である。看護系大学・大学院の急激な増加に伴い,日本看護学会協議会加入学会が30を超え,看護研究はますます盛んに行なわれるようになってきた。これに伴い,いくつかの学会では研究倫理のあり方を専門に検討する委員会を設けている。例えば日本看護科学学会看護倫理検討委員会では,「看護系大学における研究の倫理審査体制の試案」(1998),「看護学研究における倫理審査体制に関するガイドライン」(2004)を提出している。あわせて行なわれた看護系大学における倫理審査体制についての調査では,78校中63校に倫理委員会が設置されており,「計画中」と回答した大学も含めると,研究教育機関における倫理審査体制は整備されつつあるとみることができる。
一方で,主な研究の場となる医療機関の看護職が広く参集する日本看護学会を主催する日本看護協会学会委員会は,「看護研究における倫理的配慮に関する提言」(1995)を提出し,1998(平成10)年から抄録採択基準に倫理的配慮を加え,2000(平成12)年から投稿者向けの実施要項にその必要性を明記している。同委員会は,3年間の同学会応募抄録・論文における倫理的配慮に関する問題を詳細に分析し報告している(2003)が,その内容からは多岐にわたる問題状況が窺われる。2004(平成16)年日本看護協会は「看護研究における倫理指針」を刊行し,「看護研究の倫理審査体制の整備は組織としての責務である」と強調している。
このように,看護研究における倫理的配慮の重要性は認識されつつあるが,医療機関における倫理委員会の運営基準,審査手続き,審査内容などの運営方法については明らかにされていない。研究計画書の倫理審査は緒について間がない状況と考えられ,さまざまな医療機関における倫理審査がどのように行なわれているか,そこにはどのような問題があるかについて,その実態を明らかにすることは,今後の倫理審査体制の構築に向けて克服すべき課題の明確化につながるものと考える。
本研究の目的は,医療機関において実施される看護研究についての倫理審査の実態を明らかにすることである。
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