研究ノート
『質的心理学研究』が駆り立てるもの
戈木クレイグヒル 滋子
1
1東京都立保健科学大学保健科学部
pp.433-436
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100216
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世の中には,おびただしい数の研究誌が氾濫しているが,独自の魅力を放って光輝いているものは極端に少ない。そういうなか,彗星のごとく登場した『質的心理学研究』は,すべての研究者に開かれ,論文の種別を設けず新たなタイプの論文を歓迎している点,400字詰めで8~80枚,さらに審査を経ればそれ以上の枚数の投稿も可能というユニークさで一頭地を抜いている。こういうフレキシブルさの結果としてできあがった『質的心理学研究 第2号』は,まさに興味深い論文が百花繚乱。震災被害や失語症の当事者にとっての意味,中年のライフストーリー,断乳をめぐる母親の経験,幼稚園での子どもの体験,生死,と内容も多岐にわたるにぎやかさである。
もともと,この研究誌は2001年に出版された『カタログ 現場(フィールド)心理学―表現の冒険』(やまだようこ,サトウタツヤ,南博文,金子書房)に端を発し,「新たな心理学の方法論と表現法を提案するカタログ=見本帳」としてデビューした。そして,2002年の『質的心理学研究 第1号』,今年2003年の第2号というふうに,順風に帆を上げた歩みをみせている。
まるでアミューズメント・パークのような誌内を探検する楽しみはそれぞれの読者に残しておいたほうがよいに違いないが,ここでは,はずせないと思われる見所を紹介しつつ,『質的心理学研究』から学ぶべきものと,私たちに厳存する課題について書かせていただくことにする。
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