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近年の医学の進歩に伴い,産婦人科領域でも新しい知識が必要となっています。各種ガイドラインも増えてきました。また,周産期医学,生殖内分泌学,婦人科腫瘍学に加えて,4つ目のサブスペシャルティとして女性医学も加わり,カバーする領域も広がっているためか,「あれって何だっけ?」ということも多くなってきています(もちろん加齢の影響は否定しませんが……)。最近ではスマホでの検索という便利な方法もありますが,決して最新情報が上位に検索されるとは限りませんし,実際に知りたいことにたどり着くまでに時間がかかることも少なくはありません。その点,いわゆるポケットマニュアルは,一目で確認ができ,必要ならば関連事項もすぐにチェックできる点で優れていることはいうまでもありません。産婦人科領域でも類書は少なからずありますが,本書は産婦人科最強のベッドサイドマニュアルと称されるとおり,30年以上にわたって改訂を続けており,今回,5年ぶりに第8版が発刊されました。
私も研修医のころにお世話になったマニュアルであり,少し厚くなったようですが,赤系の背表紙は変わっておらず,懐かしく手に取りました。驚いたことに,がん・生殖医療やプレコンセプションケアといった時代のトピックスが既に項立てされているとともに,各項も単なるブラッシュアップにとどまらず,図表,特にフローチャートが多く,ポケットマニュアルとしてはとても見やすくなっています。内容的にも単にガイドラインの引用ではなく,豊富な臨床経験に基づくエッセンスを基に重みを付けて,必要かつ十分,いわゆる痒いところに手が届くようにまとめているのが大きな特徴です。徳島大産科婦人科の先生方はしっかりした基礎の上に臨床・研究をされていると常に感じていましたが,そこには膨大な知識をそしゃくして,伝えていくという一手間があったことが理解できました。青野敏博教授,苛原稔教授,そして新任の岩佐武教授と脈々と引き継がれてきた伝統が作り上げた実用的なマニュアルといえ,ロングセラーの理由が納得できます。
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