特集 産む人を中心にした帝王切開
怖くも痛くもない帝王切開—麻酔で術後を穏やかに過ごすために
照井 克生
1
1埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科
pp.346-353
発行日 2023年8月25日
Published Date 2023/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202171
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帝王切開分娩についての私の考え方
私の妻は,第一子妊娠中の36週5日に破水しました。病院に着くと足位が判明し,臍帯脱出しないうちに,と緊急帝王切開分娩(以下,帝王切開)となりました。産後に息子は症候性の低血糖で哺乳ができなくなったり,低体温で保育器に出たり入ったりを繰り返しました。今で言う晩期早期産児の問題そのものでした。
麻酔科医である私は,当時は呼吸状態ばかり気にかけていて,その後の成長・発達にも満足していましたが,息子が中学生ぐらいのときに妻がポロリと,「あの時は普通に産んであげられなくてタカ(息子の名前は敬生です)に申し訳ないと思ったのよ」と話しました。医療従事者でない妻は,両親学級に通って下から産むつもり満々だったので,緊急帝王切開となり,しかも早産で息子がいろいろな問題を抱えたことから,息子に対して罪悪感を抱き,普通の方法で産めなかった挫折感を抱いていたのだと分かりました。妻のそのような思いを知らずに十数年一緒に暮らして来たのかと思うと,胸が締め付けられる思いでした。
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