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連載のはじめに
私はこれまで母性看護学の教育に長く携わってきましたが,以前から母性看護学の教育内容の構成に疑問を感じていました。例えば,妊娠期の教育内容は妊娠経過,母体の生理的変化,胎児の成長・発育,胎盤の機能,そして妊婦健診,保健指導と,それぞれについてはきちんと学ぶことができるのですが,なぜそのような保健指導が必要なのか,根拠をもって説かれていないのです。私はこれではいけないと長年思っていました。
そこで,「母子の状態」と「必要な看護」がつながるように,根拠をもとに理論的に母性看護学を記述して,母性看護に携わっている助産師・看護師の皆さんに,そして,看護学生や助産学生の皆さんにお示ししたいと考えました。本連載でご紹介するのは母子を一組のペアとして見つめ,母子の「相互影響」の視点から必要な看護を考える方法です。筆者はそれを「母子相互影響看護論」と呼んでいます。
母性看護の実践現場では,母親と子どものそれぞれの状態に合わせて看護しつつも,妊娠期であれば妊婦と胎児を,産褥期であれば褥婦と新生児を一組のペアとして見つめて看護をすることの大切さを感じることが多いと思います。その典型的な看護ケアの例として,出産直後に母と子が肌と肌の接触ができるように援助する早期母子接触というケアを取り入れ,母子間の愛着形成を促進することや,産褥早期に母子同室制を導入して可能な限り母子分離を避けることなどが挙げられます。しかし,これらの看護ケアは母子を一組のペアとして見つめて実施する看護の中のほんの一部に過ぎません。本連載では,もっと広く母性看護のあらゆる実践場面に通用する,本質的な意味で「母子をペアとして見つめて看護する」とはどういうことかを述べていきたいと思います。
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