連載 りれー随筆・422
弟と,音楽と,私,そして相方
山本 幸子
1
1さちこ助産所
pp.224-225
発行日 2020年3月25日
Published Date 2020/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201495
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「姉はん,ありがとうな」
それが,弟が最期に残した言葉だった。弟が14歳,私が16歳の夏の終わり。私の最初の看取りとなった。その晩,私が病室で弟を看る番だった。同じ病室の空きベッドに,母が寝ていた。夜はとても永かった。弟は酸素テントの中に居た。時折,「お腹が痛い。母はん起こして」と言った。「お母さんは疲れているから。私が付いてるよ」。おなかをさすりながら声を掛け,黒い物が混じる吐物を片付けた。そして弟が落ち着くと,傍らの椅子に腰掛け漫画を読んだ。
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