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緒言
看護系教育機関の増加に伴い,2008(平成20)年には「看護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整理」(厚生労働省)において,看護教員の質・量の確保が指摘され1),翌年の「看護の質の向上と確保に関する検討会」(同)では,看護教員の継続教育,臨床現場での実践能力の維持・向上の機会の確保,高度実践看護師の活用など教育機関の創意工夫の必要性2),さらに2010(平成22)年には,その方策について,質の高い教育の実施には,看護実践能力と教育実践能力のバランスが重要であり,教員に求められる能力として,①学生等の体験や臨床実践の状況を教材化して学生等に説明するなどの教育実践能力,②学生等や教員間,実習施設とのコミュニケーション能力,③学生等に適切に教えることを目的とした看護実践能力,④マネジメント能力,⑤研究能力があげられた3)。
現在,わが国における助産師教育課程は,専修学校,短期大学専攻科,大学,大学専攻科・別科,大学院と5つの学校種が存在している。そして専任教員の要件は,看護師等養成所では,5年以上業務に従事し必要な研修を修了した者と定められている4)。一方,助産師教育課程の約6割を占める大学や専攻科における要件は,学校教育法に基づいて文部省令・文部科学省令の大学設置基準,大学の設置等の認可の申請および届出に係る手続等に関する規則などに定められている。その基準は専攻分野についての教育上,研究上または実務上の知識・能力・実績を有する者である。このように教員の資格要件は学校種により異なっている。さらに,教員となった助産師は,どのような道筋でどのような能力を身につけていくべきかなどについての決まったルールはなく,看護系教育機関における教員の能力育成は,教員個人の意欲や育成側の意識や取り組みに任されているのが現状であり,教育機関や教員個々によって差が生じている。助産師教育機関における教育の質の担保や充実には,教員の質の充実・強化は不可欠であり,その一方策として,教員としての経験年数に合わせた標準的能力を精査し,助産師教員のキャリアラダーを作成することが喫緊の課題となっている。
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