レポート
無輸血希望妊婦をお産難民にしないために―無輸血希望妊婦に対する,ある地方病院の取り組み
菊地 美帆
1
,
髙島 葉子
1
,
境原 三津夫
1
,
生井 恵理
2
,
飯島 高子
2
,
大嶋 寛
2
1新潟県立看護大学看護学部看護学科
2(医)和光会光病院
pp.1092-1096
発行日 2011年12月25日
Published Date 2011/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102062
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●要約
わが国の2009(平成21)年の妊産婦死亡数は53人であり,死因の20%を分娩後出血が占めている。その対策として迅速に輸血を行なえるシステムが模索されているが,その一方で,宗教上の理由(エホバの証人)により無輸血治療を希望する妊婦がおり,大量出血時に救命が困難であることを理由に,分娩を含めた周産期管理を断られるという事態が生じている。無輸血希望妊婦を受け入れている地域密着型の医療法人和光会光病院(以下,光病院)の取り組みを紹介するとともに,その存在意義と無輸血希望妊婦への支援について考察した。
光病院の無輸血希望妊婦の分娩は増加傾向にあり,全分娩の約10%を占め,無輸血希望妊婦の約40%が他院からの紹介である。光病院では産科出血に対し子宮動脈塞栓術を取り入れており,2005(平成17)年から2009年の間に77例の子宮動脈塞栓術を行なっている。
近年,分娩後出血の治療法として子宮動脈塞栓術が行なわれるようになってきた。このような治療を行なえる産科施設を中規模の地方都市にも整備することで,無輸血希望妊婦が「お産難民」として排除されることなく,地元で安心して分娩に臨むことができるようになると思われる。
また,光病院の無輸血希望妊婦の中には遠方に居住する人,リスクを抱えている人も多い。助産師は,リスクを抱え不安な気持ちで妊娠期を過ごす妊婦の気持ちを第一に汲み取り,どんな状況にある妊産褥婦に対しても,医師と協力しながら望むニーズが満たせるような支援をすることが必要である。
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