交見室
無輸血治療を忌避することなかれ
勝岡 洋治
1
1大阪医科大学泌尿器科
pp.77
発行日 2011年1月20日
Published Date 2011/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102195
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「この度,貴病院での手術を受け,本日退院させていただくことになり一言感謝とお礼の気持ちをお伝えしたくペンを取りました。私は宗教上の理由で絶対的無輸血での手術を希望して3つの病院で方針のちがいにより受け入れられず,受け入れ先をさがしておりました。貴病院の泌尿器科のK先生が同意を表明して下ったおかげで本当に救われたのです。私はエホバの証人の信者で,広い心でこの意思を尊重して下さったことに対して大変感謝しております。無事手術も無輸血ですが経過もよく退院となり,本当に喜んでいます。貴病院の寛容な方針に敬意を表し,感謝致します。ありがとうございました」。
以上の手紙はごく最近病院長宛に届いたもので,関係部署に回覧された。文中のK先生とは実名で書かれていたが小生のことである。これまでにも無輸血手術希望のエホバの証人の患者から同様の感謝とお礼の手紙をいただいているが,その中には輸血を必要不可欠とする場面が十分に想定される症例が少なからず含まれていた。しかし,冒頭に紹介した手紙の主は精巣腫瘍の患者で精巣摘出に際しては輸血の可能性は皆無といってよい状況にもかかわらず,前医で治療を受けられなかったのは気の毒であった。
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